『八月の銀の雪』伊与原新(著)宇宙と生物の美しさと力強さ【2021年本屋大賞6位】

日本文学

伊与原新さんの本を読みたいと思い、きれいな表紙のこちらを選びました。

『八月の銀の雪』
著者: 伊与原新 /出版社:新潮社

第164回直木三十五賞候補
第34回山本周五郎賞候補
第7回本屋大賞(2021年)第6位

◎作品紹介(簡単なあらすじ)

表題作を含む五篇の短編集。

『八月の銀の雪』大学生の堀川は就職活動がうまくいかず、重苦しい思いの日々が続いています。ある時、不器用なコンビニ店員のベトナム人グエンと話をする機会があり、彼女の話に驚きひきこまれます。

『海へ還る日』一人で子どもを育てている女性が、自然史博物館で深海やクジラの話を聞き心を奪われます。

『アルノーと檸檬』迷い鳩をめぐるお話。脚環に「アルノー」と書かれているがどこからきたのか全くわかりません。

『玻璃を拾う』SNSトラブルから始まるお話。珪藻アートの美しさが目に浮かびます。

『十万年の西風』原発会社を辞めた男性と、気象庁の研究官をしていた男性が、凧揚げで出会うお話。空、雲、風、温度などが凧揚げを通して伝わってくるといいます。

◎著者の伊与原新さんについて

1972年生まれ。大阪府出身。
神戸大学理学部地球科学科を卒業後、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。地球惑星物理学が専門だったそうです。
卒業後は富山大学の理学部助教として働きながら、2008年より執筆活動を始め、初めて書いた小説『二度目の満月』で第55回江戸川乱歩の最終候補作に残りました。

2010年『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。
2019年『月まで三キロ』で第38回新田次郎賞を受賞。
最新作に、2022年2月発売の『オオルリ流星群』があります。

◎感想

地球のこと、宇宙のこと、知れば知るほどわからないことがたくさん出てきて、日々研究している方には感謝の思いがします。
身近にあることが当たり前で、何も知ろうとしていなかった事がたくさんあることに気が付きました。
人間も同じようにわからないことだらけです。

表面だけ見ていても、他人にはけっしてわからない。その人間にどんなことがあったのか。奥深くにどんなものを抱えているのか。

『八月の銀の雪』より

『アルノーと檸檬』では、伝書バトによる鳩レースというものがあったのを初めて知りました。厳しい訓練を繰り返してやっと伝書バトになれるのですね。とても賢い種類のようですが、行方不明になってしまう鳩もいるようです・・・鳩を通じて、人間の隠れていた部分が見えて優しさを引き出してくれる、動物の純粋さのすごさがわかったお話でした。

『玻璃を拾う』に出てくる珪藻アートはとても気になり、画像検索してみましたが、想像以上の美しさに感動しました。アート作品を見て素晴らしいと感動しても、どのようにして作られたのか、どんな思いで作ったのか、そこまで考えていませんでした。

どのお話も科学の話をしながら進んでいくので難しいかなと思ったのですが、そんなことはなく、科学の苦手な私にもわかりやすく、どんどん興味がわいてくるほどです。

心が静かに暖まっていく、そんな1冊でした。

◎まとめ

科学の好きな方、優しいお話の好きな方におすすめです。
今年(2022年)初めて読んだ作家さんで、まだ既読3冊ですが、すべてお気に入りです。ほかの作品も少しずつ読むつもりです。

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