先日読んだ『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』がとてもよかったので、こちらも手に取りました。町田そのこさんの作品を読むのは2作目です。表紙の画像と「クジラ」の文字から、内容の想像がつきません。初めての長編小説だそうです。
『52ヘルツのクジラたち』
著者: 町田そのこ /出版社:中央公論新社
第18回本屋大賞(2021年)大賞受賞作品
◎作品紹介
主人公の女性・貴瑚(キナコ)は幼いころから親に虐待(ネグレスト)され、もう人生を終わりにしようとしていました。
そんなときに同級生の美晴と、美晴の同僚であるアンさんに偶然出会い助けられます。
人生の再スタートをした貴瑚ですが、うまくいかないことも多くあり、また人生を終わらせようとしてしまいます。
そして第3の人生として、東京から遠い海辺の町へ移り住み、一人の少年と出会います。
母親に虐待され、親からは「ムシ」と呼ばれ、話すことができない少年。
貴瑚はこの子を救い出したいと強く思い、行動に移します。
***52ヘルツのクジラとは?***
非常に珍しい52ヘルツという高い周波数で鳴くクジラの個体。
声は検出されているが正体は不明で、たったひとりのクジラなので「世界でもっとも孤独なクジラ」と呼ばれているそうです。
◎著者の町田そのこさんについて
1980年福岡県生まれ。
2016年『カルメーンの青い魚』で、新潮社主催の第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。
2017年、受賞作を含むこちらの短編集『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビューされています。
2021年『52ヘルツのクジラたち』で第18回本屋大賞(2021年)大賞受賞。
2022年『星を掬う』第19回本屋大賞(2022年)第10位
新作の『宙ごはん』が2022年5月に発売されています。
◎感想

主人公の貴瑚(キナコ)がなぜ知り合いのいない街で一人で暮らし始めたのか、何か深い理由があるのだろうとは思いながらも、全く想像もできないままに読み進めていました。
何か心に大きな傷のある様子のキナコ、心の支えであったアンさんとなぜ今は会えないのだろうと疑問が増えるばかり。
でもそこで出会った話のできない少年(名前がわからないので「52」と呼んでいます)への想いから少しずつ、理解できました。
孤独で痛々しい少年「52」を救ってほしいと思いました。
考えなしの善意は、あの子の首を絞めてしまうだけかもしれない。
『52ヘルツのクジラたち』2夜空に溶ける声 より
子どもの頃からずっと虐待を受け、自分を見失っていたキナコ。親から離れ自立し、仕事や蘭愛を経験していっても、愛すること、愛されることに不器用で、虐待やDVの描写がとてもつらくて、途中読み進めなくなりました。
しかし、つらく苦しい経験をしながらも、前を向いているキナコと、一緒にいる「52」がどうなっていくのか気になり、結局はそこから最後まで一気に読みました。
終盤「52」の本当の名前がわかったときには複雑な思いがしました。
わたしは、わたしの声を聴いて助けてくれたひとの声を聴けなかった。もしわたしが彼の声を聴いていれば、全身で受け止めていれば。そうしたらこんな今にはなっていなかったはずだ。
『52ヘルツのクジラたち』2夜空に溶ける声 より
この気持ちは後悔するだけでなく、これからしっかりと生きていくための力にもなっているのだと思います。
二人がやすらげる場所が見つかりますように。
小さな声を聴き逃さないように、耳を澄ませていきたいです。
◎まとめ
家族に関わる物語が好きな方におすすめです。
短編集がとてもよかったですが、長編も素晴らしかったです。どんどんページをめくりたくなるお話でした。
たくさんの年代の方、特に20代以上の女性の方に読んでもらいたいです。


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