『BUTTER』というタイトルから、どんな小説なのか全く予想がつかなかったのですが、表紙の画像にひかれて手に取りました。柚木麻子さんの作品は初めてです。
『BUTTER』
著者:柚木麻子 /出版社:新潮社
第157回直木三十五賞候補
2022年新潮文庫の100冊に選ばれています。
◎作品紹介
次々に男たちから財産を奪い、3人を殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子。世間を騒がせたこの事件に、週刊誌記者の里佳が動き始めます。
カジマナこと梶井真奈子が逮捕直前まで更新していたブログには、食べ歩きやショッピング、料理などの贅沢な話題にあふれています。里佳はこのブログを読み込み事件を調べます。
本当に3人を殺害したのだろうか…
拘留中のカジマナとの面会を続けるうちに、彼女にどんどん影響を受ける里佳。
料理にも食事にも興味のなかった里佳はカジマナの話を聞くたびに食への新しい発見をし、美味しいものへのめり込んでいきます。食以外の話にものめり込み、人としても変わっていきます。
この変化が悪いほうへいくのか、良いほうへいくのか、事件は解決するのだろうか…
最後まで目が離せない展開です。
◎著者の柚木麻子さんについて
1981年東京都生まれ
2008年『フォーゲットミー、ノットブルー』でオール讀物新人賞を受賞。同作を含む初の単行本『終点のあの子』で2010年にデビュー。
2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞受賞
著書の『嘆きの美女』『ランチのアッコちゃん』はドラマ化されています。
◎感想
この物語の主人公である里佳が、カジマナに面会するたびに強く影響されて変わっていく様子が恐ろしく思えました。
それが永遠と続くようで光も見えず、読むのが苦しくなるほどでした。
「私が欲しいのは崇拝者だけ。友達なんていらないの。」
『BUTTER』より
このカジマナの言葉。真実なのか、強がりなのか、どちらとも取れる行動に振り回されます。
自分でもなぜだかわからないが、相手の話に納得してしまい、指示にしたがわなければいけないと思ってしまう。
洗脳とはこういうものなのですね。
被害者が勝手に体調や精神を悪くしていっただけで、カジマナは悪くないんじゃないかと、本気でそう考えてしまう里佳。
そんな里佳を心配した親友の伶子の行動にも驚きました。誰にも相談せず、独りで考え実行してしまう。中途半端なことはしない、やるかやらないか、その行動力がとても危うく、自分をもっと大切にしてほしいと感じました。
「いつも損得や勝ち負けなど度外視して、未知の世界に真正面からぶつかっていく。そして、誰よりも傷つき、多くを失う。」
『BUTTER』より
伶子は本当にこの言葉通りだと思います。
どうしてそこまでするのか、何がしたいのか、私にはわからない部分も多くありました。
そんな伶子も少しずつ変わっていき安心しました。
「こんな屈辱を受けても、平然と立ち直らないと、どうやら前には進めないらしい」
『BUTTER』より
里佳のこの気持ちにはとても共感しました。
そしてここからの里佳の変化と成長には心から応援したくなりました。
私もどんなことがあっても逃げられないのならば、止まりながらも少しずつ前へ進んでいきたいと思います。
◎まとめ
刑事事件や記者の仕事に興味のある方、スリルのある話の好きな方におすすめです。
ずっしりと重い読後感です。
新潮文庫の100冊では「ヤバイ本」に分類されているのも納得です。
この「ヤバイ本」に分類されている中で、既読ですが読んだのがずいぶん前なので内容を忘れている『変身』カフカ(著)と『ジキルとハイド』スティーブンソン(著)の2作を読みたいと思っています。
読みたい本が多すぎていつになるかわかりませんが…
これからは毎月テーマを決めて選書していこうかと考えています。


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